モデルで見るデザイン考
カテゴリ:  雑感 / テーマ: 模型・プラモデル / ジャンル: 趣味・実用
夜、間接照明のラウンジで一人ブランデーグラスを揺らしながら、カウンターに置かれたKLM773をじっくりと眺め、そのフォルムと洗練されたデザインをゆっくりと堪能しまだ見ぬ異国に想いをはせる。そんな大人の時間を過ごすのが夢である。
以前、新大阪店の帰りに仕事仲間を待つ間、がらがらの居酒屋のカウンターで、箱から出して眺めていたことがあった。熱燗におでん、赤提灯に有線のムード歌謡が流れ、女将さんが義理で興味を持ってくれたふりをして話を聞いてくれた。これはこれで渋いシーンなのかもしれないが、女将さんが手にしたモデルを落としはしないかとそればかり気になって結局ゆっくり鑑賞するとどろの話ではなかった。Kenya Airways B767では話題がそれ以上膨らむはずも無く、早々に鞄にしまいこむ事となった。やっぱり適度に放っておいてくれるショットバーがいい。マイボトルならぬ、マイモデルを肴に世界に想いをめぐらし一杯引っ掛けて帰る。そんな生活に憧れたりもするのであるが、いかんせん地が庶民なのでそんな気取った事はでけへんなぁ。先月見つけたエスニックバーの親父さんのところにしばらく通ってみるか。

そもそも飛行機モデルはコレクション性が高くなる要素が多い。切手やコインのように世界中のどこでも見られる上、各国・地域によってオリジナリティに富んでいる。各国の民族性や感性、価値観までもが反映される。飛行機が発明された100年ちょっと、量産飛行機が国際線に安定的に飛ぶようになったのは戦後。海外旅行が日本でも一般的になってまだ50年ほどしか経っていない。この半世紀で、これほどまでに異国情緒を堪能できるコレクションはそう無いだろう。

さて、つらつらとモデルを眺めていると、なかなか凝ったデザインもあればそうでもないデザインもある。デザインにも流行があるが、なんせキャンパスは横に細長い胴体と大きな立看板のような尾翼である。この特殊な形のキャンバスにデザイナーはどんなデザインを施してきたのか。

しげしげと眺めているうちにいくつかのパターンがある事に気がつく。
(0)胴体と尾翼のデザインの連続性
まず大きなキャンパスである胴体と尾翼に分けることが出来る。尾翼だけ単独のデザインとするか、胴体と一体型のデザインとするかである。一体型は同系色としたり、ラインを連続的につなげたりしてデザインの一体化を図るものである。前者ではJAL、LHなんかが代表的、後者ではANAやQFが該当する。
<不連続>s-DP1070157.jpg

尾翼はさておき胴体でのデザインだけに注目してみる。
(1)大体何分割されているか
全体が同じ色なら分割なし、2色なら2分割・・・となる。後で触れるチートラインは分割色に含めない。濃い紺のラインで上下の色を塗り分けているKLMなどは2分割である。ラインが太いと、なかなか判断に迷うことになる。例えばANAは白、青、灰の3分割だが、白や下面の灰あるいは無塗装(ベアメタル)は違いが無いものとすれば白と青の2分割といえなくもない。いずれにせよ3分割以上は少数派になる。

更にデザインを分類してみる。
(2)分割の方向
機体をどの方向の境界線で分割しているか。最も多いのは水平分割(-)だろう。次いで機首から尾部にかけて徐々に上がっていく上昇分割(/)、これとは逆に最近よく見られるようになった下降分割(\)。ほとんど無いが垂直分割(|)。水平はチートラインからの名残で割と多い。水平の塗りわけは高速性や安定感を連想させる。客船と同じ発想である。上昇分割は飛躍や成長を連想させる。下降分割は逆のイメージになりがちだが濃色系を後半に配して尾翼と連続させる事で、安全、安心感、高級感をかもし出す。垂直分割は分断や停止をイメージしてしまう。よほどの理由がないと採用されにくい。
<水平分割> s-DP1070163.jpg s-DP1070161.jpg<上昇分割>

<下降分割>s-DP1070162.jpg s-DP1070164.jpg<垂直分割>          

(3)境界線の有無
境界線に別色のラインが入る。それも単色ではなく、複数色の細いラインが入る事もある。1970年代までの主流だったチートラインは典型的な例だ。あまりないとは思うが境界線がグラデーションになっていることもデザイン的には有りうる。最近のKLMのOrange Prideがそうだが、これもよほどはっきりとした意図がないとわかりにくいし、汚らしくなるリスクがあるし、第一メンテナンスにコストがかかってしまう。
<チートライン=水平ライン>s-DP1070159.jpg

(4)境界の形状
境界線が直線的なのかそうでないのか。一般的なのはもちろん一直線。直線ではなく前方(または後方)に膨らんだ曲線、上方(または下方)に膨らんだ曲線。昨今は直線より曲線が多用されている。あまり見ないが曲線ではなく折れ線で前方(上方)、後方(下方)で区切られた境界線もあるかもしれない。曲線や折れ曲がりが複数回用いられる波型や、のこぎり型なんてのももしかしたら存在するかもしれない。編曲点が存在する微妙な波型が最近のトレンドである。
<水平波型>s-DP1070158.jpg

(5)境界線の位置
大体機体の中央を通る線で分割されるのが普通だが極端な機首、尾翼寄りの境界も多い。前後上下中央とどの位置で分割されるかによって印象も随分異なってくる。

ここまでで機体全体としてのイメージが大体固まってくる。機体のデザインを決定付けるものとしてはあといくつかの要素がある。
(6)配色
あまり気にしないことも多いが、これは何色かということではなく、分割された領域のそれぞれの色の配置がどうなっているかと言う意味合いである。具体的には、背景色ともいえる白、灰、メタルと、濃色、淡色の配置の方法だ。濃色は思い印象を与える為下方や後方に配置されることが多いが、まれに逆配置となることもある。この辺りはデザイナーやエアラインの強い意向やこだわりが予想されるがそんな思いというものも本当は詳しく聴いてみたい。

(7)柄・模様
各領域が単色の事がほとんどだが、まれに領域または機体全体が模様に覆われているものもある。よくみればドットパターンだっり、民族的な模様だったりが隠されている事が結構ある。

(8)ワンポイント
最後に配色や領域とは関係のないロゴやマークが配置されることも多い。ロゴだけをでかでかと描くビルボードタイプのデザインもある。かつてUTAがドアだけを緑色に塗ったのもこのパターンである。
<ロゴ>s-DP1070160.jpg


以上見てきたようにだいたいこういう視点でデザインを分類することが出来る。もちろん例外も少なからずある。もっと複雑なデザインというのもあるし、シンプルなのにそう来たかと唸らせるデザインもある。左右非対称デザインと言うのもあるにはある。

色については今回は考慮していないが、色そのものにも意味や象徴があり、各社の独自性を表している。色まで考え合わせると組み合わせは無限に出来そうだ。しかし、より乗客に認識してもらえるよう知恵を絞った結果、できるだけ余分な部分をそぎ落としシンプルにしたのがデザインだと思う。機体全体に写真を貼るというのはそれはそれでありなのかもしれないが、記号化という手順を経ていないためやはり厳密な意味ではデザインとはいい難い。できるだけ単純に、それでいてインパクトとユニークさを兼ね備えるのがデザイナーの腕の見せどころなのだ。モデルを通じでデザイナーの作品を鑑賞して行こうと思う。
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編集 / 2017.01.29 / コメント: 0 / トラックバック: 0 / PageTop↑
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ununennium

Author:ununennium
【New2011.4】 Facebookとの連携を只今試験中・・・

小さくても存在感抜群。場所もとらない1/500エアラインモデルの世界。小さなボディにカラフルなデザイン。メジャーからマイナーエアラインまでバリエーションは数千種類。登場は1994年と比較的新しい市場で欧米香港から毎月新モデル発売中。

・コレクションポリシー
1/500が中心。軍用機は基本対象外(例外:自衛隊、買い間違い)。各エアライン、各時代のデザインモデルをワイドボディ機優先でコレクション(例外:新金型による新機材モデル)。レジ違い位では買わない。ファミリー機材の違い(A340-200と-300)位では買わない。たまに出てくる全プラ製モデルは買わない。頂きモノ・抽選モノは拒まない。破損したら再購入。ということで重複買い事件も多発。


★尾翼シリーズ★
THE TAILはエクセルとペイントブラシにより描画。たまにInkscape。簡単に描けるもののデザインの変遷や背景調査が難しい。ライフワークになったりして。エアライン毎に既述、判明次第追記して行く事とする。ブログじゃないなこりゃ。

【文中の略号について】
OG:Old Generation。Herpa旧世代金型。
NG:New Generation。OGの対義語。2000年以降の新金型
LCC:Low Cost Carrier。格安航空会社
FSA:Full Service Airline。格安航空会社ではない普通の会社
TBL:To Buy List。買わなきゃリスト。常に携行が必要。
MBL:Must Buy List。絶対買わなきゃリスト。
CCL:Complete Collection List。1/500モデルのほぼ全リスト。

以下ブランド略号
AC:AeroClassic/Aero500
AF:Alliance500
BB:BigBird500
HG:Hogan
HW:Herpa Wings
IF:Inflight500
NM:Netmodel
SF:Sky500
SJ:StarJets

機材略号
特にルールは決めていないが大体以下の要領
B777-300 → B773
B777-300ER → B773(特に分けて既述していない)
A330-200 → A332

【新製品の欲しいリストについて】
★:「値段次第で即買い」の幻のモデル
■:持ってるモデル、あるいは買ったモデル。
◎:発売されたら「即買い」
○:財布と相談しながらも基本的には「買い」
△:コレクション対象だが見送り
×:コレクション対象外

【その他特記事項】
・記事中の年表について
 ┌← 継承
 ┌+ 複数社合併による設立
 20XX 設立または改名
 └→ 20xx 吸収消滅
 = 20xx 統合、合併
 |← 買収
 |→ 売却
 |+ 子会社設立
 × 20xx 倒産、整理
・記事中の年代について
機材導入時期については発注・導入・運行の3時期が結構あいまいで確認できないことも多い。特に1960年以前の古い機体や旧ソ連の機材などは資料すらないことが多い。基本的にデリバリーとは新造機材がメーカーからエアラインに納入された日。他エアラインからの購入・リースは導入と記載。

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